2013年4月29日月曜日

千葉晴美(2005)「”意欲”を引き出すマジック・ワード」公人の友社

前回の更新から日が経ってしまいました。最近忙しそうなサバ君ももうすぐ記事を書くようです。サバ君のファンの皆様には申し訳ありませんが、引き続き六角さんが連投させて頂きます。笑

先日堀井先生のNLPワークショップに参加させて頂きました。教育学や心理学といった学問は理論のみならず優れた実践をこの目で見るということが必要不可欠だと感じました。堀井先生はとても優しい方で、お話させて頂いた時も「学ぶことを楽しんで」と心に残るメッセージを頂戴しました。
またワークショップの振り返りも時間を見つけてまとめたいと思います。


というわけで、前回に引き続きNLP関連の書評記事です。
最近お世話になっているフリースクールの先生とNLPに関する話をしていた時のこと。NLPを学んでいても、なかなか実践でどのように用いれば良いかわからないと悩みを打ち明けました。すると先生からこの本を紹介して頂きました。具体的な事例集で、教師として用いる場合のみならず、家族や友達、仕事の先輩後輩とやり取りをする中でもよく見られる場面だったので、非常にイメージしやすかったです。

今回は特に自分が共感した場面を1つだけ取り上げて説明したいと思います。興味のある方はぜひ手にとって頂きたく思います。

森菊江さん「すごいね!頑張っているね!」(p.133)

英語教室に通うAさんという生徒(小3)と筆者の森先生の話です。ある日、Aさんが家で100回CDを聞いて覚えてきたと先生に言います。先生はもちろん褒めて、発表してもらうことになりました。しかし、Aさんは途中でつっかえてしまい、先生のサポートつきでやっと全文を言い終える状態でした。
すると、周りの子から本当に100回も聞いたのか、嘘をついたのではないか、と言われてしまいます。Aさんは涙をこぼします。



さて、ここで教師としてできることは何があるのでしょうか。
・周りの子に「そんなこと言わないの。」と言う
・Aさんに「気にしないで。次上手くいくよ。」と言う
自分だったらこれくらいのことしか考えつかなさそうです。
(生徒が泣いてしまった経験もありますが、頭が真っ白になったことしか覚えていません(;_;))



その時、森先生は以下のように伝えたそうです。

「100回聞いたんだよね!私はあなたを信じるよ。頑張ったね!」

すると、Aさんは泣くのをやめて、それ以来CDを聞くのを続けます。次第に暗唱もできるようになり、徐々に自信がついていったそうです。

この場面を読んで、自分の英会話教室での振る舞いを反省しました。できた子を褒めたり、行動面(暗唱などのパフォーマンスなど)に対して評価をしたりすることはできていても、その子の言葉を信じていると伝えることは自信をもって出来たとは言えません。

教育学では「フィードバック」という言葉があります。生徒のパフォーマンスに対して評価を与えることを指すのですが、ここではむしろ「私はあなたを信頼している」というメッセージを伝えています。そうしてAさんは自信をもって次からもCDを聞いてこれたのです。つまり外面に現れない「内面へのフィードバック」となるのでしょう。外面に見えない分、教師が想像力を働かせる必要がありますが、信頼関係を築くのも内面への働きかけのはずです。自分もこのようなメッセージを恥ずかしがらずに伝えられるようにしたいと感じました。

最後に、森先生の信念が特に現れている以下の箇所を引用したいと思います。

「出来・不出来」、「発音が良い・悪い」、「聴いた回数が多い・少ない」という行動・能力レベルで判断するのではなく、「私はあなたの言う事を信じているよ」、「私はあなたの努力を認めるよ」、「あなたはすごいね!」という「あなたを信用・信頼しているよ」というメッセージを伝えたかったからです。
私は、生徒一人一人の良いところを声に出して伝えることで、生徒が「かけがえのない自分」、「価値のある自分」「夢を持った自分」「人に受け入れられている自分」を発見し、肯定的な自己を形成して行くサポートをしていく人でありたいと思います。(p.134)

このような実践例を読んでも、上手くいったケースを読んでついつい自己満足してしまいがちですが、今回は自分の普段の振る舞いを内省することができました。そして塾や家庭教師などの実践を通して、自分も行動に移せるようにできたらと思います(^^)
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2013年4月9日火曜日

堀井恵(2008)「先生と生徒の心をつなぐNLP理論」三修社

新学期が始まりました。
やはり、朝からの授業にまだ体がついて来ませんね笑
だんだん体を慣らしながら、学部生最後の一年をエンジョイできたらと思います。


今回も書評として1冊の本について論じたいと思います。
2年前に留学していた時に聞いた「NLP」という言葉を思い出して手にとった本です。理論編→実践編という流れがとても分かりやすく、教師を目指す方にはお勧めです。

先にNLPとは何かについて簡単に説明しておきます。NLP(Neuro-Linsuistic Programming:神経言語プログラミング)は、心理学から派生した新しい領域です。

NLPのスキルは意識を変え、問題の見方を変え、望ましい状態を作ります。(p.12)


とあるように、自分が悩んでいるときに考え方を変えて望ましい状態を目指して行動したり、目の前の相手(教師であれば生徒や保護者、同僚など)に対する言葉かけを選んだり立ち振る舞いをコントロールすることで、望ましい結果を得られるようにしたりできます。

自分がこのNLPに興味を抱くようになったきっかけは、もともと自分がコミュニケーションがそこまで得意ではなく、将来生徒に対してどのように接すれば良いかという不安が心にあったことだと思います。本書を読むことで、テクニックを知ることはできますが、残りは普段の生活の中で実践することで体得していくものだと理解しております。

本記事では、NLPに大切な10の原則のうち、「肯定的意図」に関する箇所について述べたいと思います。

"Positive intent : Behind every behaviour is a positive intent."


何か悪さをする子とか、否定的な行動を繰り返す子。それは、結果としては、行動は否定的ですが、その行動の裏側にも肯定的意図があるのです。その肯定的意図を知って、それを満たしてあげることによって、その悪さをしなくなります。その人間の持つ力を生かしていきましょう。(p.19)

人間の行動の裏側には必ず肯定的な意図がある、というNLPの前提があります。肯定的に発想を転換して行くのが、大事なのです。なぜそれらのマイナス行動を取るのかということです。(p.109)


例えば、ある生徒が授業中に友達が問題を解く邪魔をしていたとしましょう。(実際に学習塾などでよく見られる光景です笑)その時はどのような声の掛け方があるのでしょうか。

「こら!何をやっとる!静かにせんか!」
「邪魔をするな。お前はいつもそうだな」

このような声かけはおそらく生徒が一方的に怒られた印象を持ち、関係がこじれたり反抗したりするかもしれません。(「教師学」の"you-message"に近いものがあるかもしれません。興味のある方は調べて見てください。)

代わりにこのような声かけはいかがでしょうか。

「今日はおしゃべりして、どうしたの?」
「さっき邪魔してたけど、本当はどうしたかったの?」

この声かけでは前述のものよりも以下の点で望ましい声かけと言えると思います。
・一時的言語(今日は、今回はのように限定する言葉)を用いているので、生徒の人格否定にはつながりにくい。
・「おしゃべりをした」という否定的な行動の裏側に隠れる肯定的意図を尋ねることで、本当はどうしたかったかを言うチャンスを与えている。

このような声かけをすると、おそらくは「だって◯◯が俺のこと無視したから」とか「◯◯と……の話したかったから」と、かわいらしい理由が聞こえてきそうな気もしますが笑
このような少しの心がけによって、「そっか、◯◯と話したかったのか。でも、先生は今はこの問題を解いて、不定詞の使い方を身につけて欲しいんだ。」と教師も望ましいアウトカムを伝えることができるようになります。否定的な言葉づかいをしないため、生徒も自分がどうしたら良いのかを端的に理解でき、嫌な気持ちをしなくて済みます。

これは更生保護にも関わる考え方で、少年がある非行をしたとしても、その行動のみを見て判断するのではなく、彼が非行をするに至った背景やその非行の”肯定的な意図”を見出すことが我々には求められているように思えます。非行の規模が大きければ大きいほど行動しか目に入らなくなってしまいそうですが、そんな時こそこの原則を忘れないようにしたいですね。

このようにNLPはとても魅力的なものだと思います。







ここまで読んだ方の中には、「そんなにうまくいくか?」と疑われている方もいらっしゃると思います。(実は僕も少し疑いながら読んでいました。)

例えば、仲が完全にこじれた生徒と話すときに、少しNLPのテクニックを用いて話をするだけで、関係が元に戻るのかといえば、実際はそううまくいくものでもないと思います。NLPも新しい領域で、科学的根拠の薄さが批判に挙げられる(と留学先で習いました)こともよく指摘されます。

しかし、教師としてこのような態度を知っておくことは、決して損ではないと思います。現に教師の声の掛け方で学級が蘇った例などもありますし、学習指導がうまくいった例も本書には紹介されています。

賛否両論の分野かもしれませんが、だからこそ一度手にとって読んでみて下さい。特に、最近何かに悩んでいる方にはぜひ読んでいただきたいと思います。




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また、 堀井先生によるワークショップが4/14(日)に広島国際会議場で開催されます。興味のある方はぜひご参加下さい。







2013年4月3日水曜日

藤本一勇(2009)「外国語学」ーなぜ外国語を学ぶかー

私たちはなぜ外国語を学ぶのでしょうか。

日本には多くの翻訳本が出ており、日本語の読み書きさえできれば多くの知識が入れられます。(もちろん学術的に原書を読む必要性は私も日々実感しております。)それに日本にいて外国語を使う機会は極めて限られています。

この質問に対して英語の先生ならなんと答えるでしょうか。「街で外国人に道を聞かれた時にも英語で答えられる」でしょうか。それとも「将来海外で仕事することになった時に困らないように」なのでしょうか。
いずれにいても、私が知っている中学生たちなら即座に「別に道聞かれてもシカトすりゃ良くね?」「てか、日本にいるんだから日本語使えよ」「別に俺は土木だから海外行くことないし」と返してくるはずです。

最近、多くの方とこのような話をするため、最近読んでいる「外国語学」から関係する箇所(主に第二章)を引用しつつ、私なりに考えたことをまとめたいと思います。あくまでも私の恣意的な引用です。(この「恣意的な」という部分も本書では重要な概念になるのですが、それはまた次の話にします。)


■ 言語によって私たちの思考が支配されている

私たちは外部世界をそのものとして、ダイレクトに把握しているわけではない。物理的なことを考えても、私が人間という生物であれば人間という種に自然と備わった肉体(感覚器官)によって、私に与えられる外部世界の情報は工作されている。人間である私たちが見ている聞いている、感じている「世界」は人間の肉体的条件によって与えられたデータの世界であって、外部の生の世界ではない。(p.18)
身体の感性的メディアを第一段階のメディアと呼ぶなら、言語は、身体的条件によって与えられたデータをさらに歴史的・社会的記号によって意味づける第二段階のメディアである。{p.18)

すなわち、私たちが認識している物事や思考は、我々が使っている言語によって影響を受けているということです。サピア・ウォーフ仮説も同じようなことを主張しているが、筆者はこれを言語がもつ「力」としています。
言語が持つ力の例として、国民統一に共通言語が歴史上用いられてきたことが本文では例として挙げられており、他にもフランス語では蛾と蝶が区別されず、同じ単語(Papillon)で表される。しかし日本語ではこの2つの虫は別物として、しかも与える印象が大きく異なるものとして表現します。。この例について氏は以下のようにつけ加えている。

それぞれの言語が別々の仕方で世界を「分節」(articulate=結び目を使って組織化すること)し、意味付けているというだけのこと(p.30)

要するにこの「分節」が私たちの思考に影響を与えるものである。本文中では「物の見方」「新しいメガネ」などという言い換えがなされている。

■ 言語による変身
外国語を学ぶことの効用は、まずは、新しい言語を習得することによって、新しい「メガネ」、新しい物の見方新しい意味世界を獲得できることだろう。私たちの認識は、さらには感性さえもが、言語の表象システムによって知らぬ間に構築されている。「人格」さえ、言語に大きく規定されているかもしれない。(p.39)

例えば、自分は大学1年の頃はとてもおとなしく、そこまで人と関わるのが好きではありませんでした。しかし、2年の頃に留学でイギリスで半年間英語で過ごすと、人と関わるのがとても楽しくなり、それからはサークルやバイトもとても楽しめるようになりました。(当時の友達に聞いても、留学から帰ってきてから付き合いやすくなったと言われますし、先生にも変わったねと言われます。本人にあまり自覚はないのですが…。笑)

これも上の藤本氏の記述で説明がつくのではないでしょうか。すなわち、日本語というOSを通して私はこの20年間外部世界を認識に取り込んできました。しかし英語のみで過ごす経験を通して、英語というOSを用いて新しい「メガネ」で世界を見ることができるようになったのです。(もっとも藤本氏に言わせれば、自分の経験は他にも多くの要因があったに違いないと指摘されることと思いますが。)

そして「私」という人格にも影響を与えて、今はコミュニケーションが好きになったのでしょう。この根拠として、「言語の選択」という章から数カ所引用させて頂きます。

言語を「替える」ことは、発想や行動を「変える」きわめて有効な手段の一つである。(p.41)

外国語を学び、新しい眼差しを手に入れることによって、現状を離脱した新しい「私」に変身する可能性が与えられる。(p.41)

では、一番最初の問いである「なぜ外国語を学ぶのか?」という問いに対して、本書から導き出される示唆を基に自らの言葉で伝えるとするなら、以下のようになります。

(1)日本語のみを用いてこれまで暮らしてきたと思うが、それは日本語で表される”限定された”世界であった。
(2)そこで、英語(あるいは他の外国語)を学ぶことで、新しい世界の見方を得ることになったり、今まで見ることのできなかったものが見えるようになる。
(3)さらに、世界の見方が変われば自分の性格や人格も変わるかもしれない。こうして偉そうに喋っている自分も大学生の頃はだな……(以下長くなるので省略)


もちろん英語教育をよりマクロな視点で見るという意味でも、政治やビジネスの問題とつなげて考えたり、技術的教育観的に「英語により○○できる」という発想をしたりすることも必要です。(むしろ実利的な方が生徒は食いつくようにも思えます。)

しかし、本書で示唆された考え方もぜひ自分は持ちたいと思います。



… …しかーし!!
上記(1)〜(3)の話をしただけでは、私の知っている強者の中高生たちであればさらに反論を重ねてくると考えられる。(例、「てかスマホの翻訳機能使えば一発じゃね?」「そもそも英語とか見ただけで吐き気するしー」笑)彼らに論破されないためにも、そして彼らに英語をやろう!という気にさせるためにも、これからもっと色々なことを考えられたらなと思います。


※追記※
本書は翻訳論の勉強として購入した本なので、いずれ本書で取り上げられる翻訳論についてのまとめ&考察も掲載できたらと思います。

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